海外転々としてるけど、やってることは特に日本と変わらない

沢山歩いて、お家を見つけて、人と出逢って、ご飯を食べて、仲良くなったり、恋をして、寝るだけ

中華料理に”こんにちは”

眠たい目を擦って、携帯に手を伸ばす。

ぼんやりとした視界のまま画面に表示されているメッセージに目を通す。今日は彼女のheroになれる日だなとぼーっとした頭で思い、口角が上がる。

 

おはようございます。みなさんは海外に銀行口座をお持ちでしょうか。


 メッセージの送り主はトロントにワーキングホリデーで来ている日本人女性です。今は美容師として働いている彼女は、私のトロントで初めてのハウスメイトであり、友人です。

 

年上の彼女らしい淡々とした文章が画面には並べられていました。要は、銀行に用事があるので通訳をして貰えないかというものです。

 

返事をする前に窓の外を確認しました。今日は何を来て外に出ましょう。お気に入りのスキニージーンズにスペインで買ったワイシャツを合わせれば少し肌寒そうな今日の天気に勝てるだろうかと考えたあたりで携帯を持つ指が素早く動きます。

 

彼女は私がNoと滅多に言わない事を知っています。そういう仲なんです。

 

胸元に色鮮やかなお花の刺繍が入ったワイシャツを着て、彼女と合流するといつも力一杯のハグで挨拶してくれる彼女は私のコロンビア人の友達にそっくりです。

  

銀行の窓口に並んでいると、ドイツ人のお母様を持つ高身長で笑顔が素敵な銀行員の男性に声をかけられ、個別で対応してもらえることになりました。

乙女心をくすぐる笑顔を向けられ、瞬時にお気に入りのイブサンローランの口紅をつけてくればよかったと後悔しました。胸元にあるお花の刺繍ととても相性がいいんです。

 

そんな私の邪な心はお花の刺繍の下に隠し、雑談をしながら話を進めて行きます。

彼女が心配していた問題をいとも簡単に解決してくれたアレックスと少し雑談を楽しみ、私も銀行に用事があったので、ついでにお願いしました。

こういう事は、 日本の銀行ではできない事だと思います。順番を待つ事なく、私もこれをお願いしたいと頼めば、従業員としてではなく、人間として対応してくれるトロントの人達が私は大好きです。

話しが少しそれますが、以前、韓国人女性の銀行員の方に対応してもらっている時、雑談ついでに、ラデゥレのマカロンを一つ頂きました。彼氏と喧嘩をしてそのお詫びとしてもらったそうです。

マニュアル通りに仕事をしている人には申し訳ないのですが、人と人として対応してくれる方々の方が何かと話しが通じやすく、楽しいです。

 

ところで、日本人が海外で銀行の口座を開くのは本当に簡単です。これも日本の政治家さんたちのおかげなのでしょう。海外に行くと日本のパスポートを出すだけで信用度が他の国とは違います。

 

例えば、エストニアにいる友人から聞いた話しがあります。彼女がエストニアに入国する際、前に並んでいた中国人がかなり時間をかけて入国していたのに対し、彼女は日本のパスポートを見せ、呆気なく入国できたそうです。

私にも同じような経験があります。

 

銀行での用事が終わり、お昼を食べにAriちゃんおすすめの中華料理店に入る途中、「こんにちは」と白人のカナダ国旗の帽子を被った男性に挨拶されました。ヨーロッパ、中東ではあり得なかった経験ですが、トロントではよく「ニーハオ」ではなく「こんにちは」と言われます。

 

ちなみに、今日も銀行の窓口で「こんにちは」と声を掛けられました。「どうして知っているの」私が聞くと

 

「こんにちはとさようならはみんな知ってるものだよ」

 

と、黒人の小さな島で生まれたという彼は明るく私に言いました。

 

私はニーハオと言われるのにとても慣れています。そして彼らに悪気はなく、知っている言葉を話したいだけだという結論に行き着いています。後は、世界では韓国ドラマや音楽が流行っているので「アニハセヨ」と言われることもあります。

 

いいんじゃないですか。私も知っているスペイン語やアラビア語でこんにちはと使いたいときがありますから。

 

中華料理店の前で「こんにちは」と挨拶されるとは流石に思いませんでした。美容師の彼女と気分良く中華料理を食べたのはいうまでもないでしょう。

 

信用ある誇らしい赤のパスポートを持ち、いろんな人に自国の言葉で挨拶され、気分は日本代表です。